別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「それに持ち帰ったりして自宅で作業できるのは小さい子どもがいる身としては、ありがたいから」

 発言して我に返る。凌空の話題を出さないようにしていたのに、自分から口を滑らせてどうするのか。案の定、妙な沈黙が走る。

「綾人は、どう? 副操縦士になったんだよね? お休みとか不規則そうだね」

 不自然にならないように綾人に尋ねた。

「ああ。飛行機は四六時中飛んでいるから業務上、決まった日が休みっていうのはないんだけれど、一ヶ月のフライト上限時間は決まっているし、体が資本だから休みはきっちりあるよ」

「そうなんだ」

 別れたとき彼はまだ訓練生になる前の研修の一環として地上勤務をしていた。それが今は立派な副操縦士だ。なってからも勉強と訓練の連続だと言っていたから、きっと私が想像するよりずっと大変な毎日を送っているのだろう。

「私、そろそろ行くね。今日中に編集を終わらせないとならないものがあって。お休みの日の忙しいところ呼び出してごめん」

 用件はもう済んだ。伝票に手を伸ばそうとしたら、その手を綾人に取られる。

「可南子。別れたときのことなんだけれど」

 真剣な面持ちで彼が切り出した瞬間、バッグにしまっていたスマホが音を立てた。彼の手が離れ、確認すると表示された番号は凌空の保育園で私は急いで電話に出る。

「山口です。はい。いつもお世話になっております。いいえ、大丈夫ですよ」

 相手は凌空の担任の先生で、突然電話して申し訳ないと先に謝られる。
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