別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「それにしても可南子が母親か」

 しみじみと呟かれ、動揺を悟られないように明るく返す。

「驚くよね。自分でも私が母親になるなんてびっくりしてる」

「そんなことないよ」

 間髪を入れずに前を向いたままの綾人から返事があった。

「可南子は優しくて思いやりがあるから、絶対に素敵な母親になると思っていた」

 優しい口調に、なんだか泣きそうになってすぐに言葉が続かない。けれど黙ったままなのも不自然だ。

「綾人もいいお父さんになる……と思うよ。子どもにとって、かっこよくて自慢のパパだね」

 本音で答える。彼が付き合っていたときに私をそんなふうに思ってくれていたなら、私だって考えたことがある。彼との未来を夢見るときだってたしかにあった。

 平日の午後なのもあり、道路は比較的空いていた。保育園の駐車場はお迎えの時間とズレていたためあっさりと停められ、予想よりかなり早く着く。

「子どもの調子よくないなら家まで送ろうか?」

「ありがとう。でもここからアパートまでは歩いてそんなにかからないし、綾人の車はチャイルドシートがないから凌空を乗せられなくて」

 せっかくの厚意だが、やんわり断る。綾人とはここでお別れだ。お礼をしたくて会ったのに余計に世話をかけさせてしまった。

 反省しつつシートベルトを外してドアを開けようとする。

「可南子の子どもに会ってみたい」

 改めてお礼を告げようとしたら、彼から要求に目を丸くする。
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