別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません

　顔を覆って息を吐き、リビングのソファに腰を下ろしてしばらくその状態でいた。仕事以外にも家事などやらなくてはならないことは山ほどあるのに、いつもより集中力が落ちていて頭が働かない。どうやら綾人と再会した影響は思った以上に大きいようだ。

　綾人と別れたときのことを思い出し、胸が痛くなる。

　綾人と別れたあと、会社に家庭の事情で実家に戻る旨を告げた。普通なら辞めるしかなさそうだが、実家から通えそうな距離にある支社に新年度から異動できるよう計らってもらえることになったのはありがたかった。

　さらには引っ越しの準備を進め、忙しさに身を任せ、ただ日々が慌ただしく過ぎていく。あえてそうしているところもあった。立ち止まったら綾人のことを考えてしまいそうだから。

　綾人から何度も連絡があったが、すべて無視を決め込んだ。

　そうこうしているうちに四月になり私は実家に戻って、新しい勤務先に通い出す。綾人も予定通りならアメリカに渡っただろう。

　努力家で真面目な彼なら立派なパイロットになれる。いつか綾人の操縦する飛行機に乗れたら……それくらいの夢は見てもいいのかな。　

　大林さんの息子さんとの結婚する旨を告げたとき、両親には心配され無理をすることはないと言われたが、私が決めたことだ。

　ところが、大林さんの息子さんに会う前に妊娠が発覚した。元々生理不順なところがあり、綾人と別れて忙しさなどのストレスで今回も遅れているだけと勝手に思っていた。

　もちろん綾人との子どもだ。最後に会ったとき、お互いに気持ちが昂って私も最後だという想いから情けないことに避妊にそこまで気を配れなかった。