別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
 お腹の子どもはどうするのか、大林さんの息子さんとの結婚はどうするのか。息子さんと結婚しないとカルペ・ディエムがなくなってしまう。

 パニックに陥った私を、落ち着かせて支えてくれたのは姉だった。

 姉が私の代わりに大林さんと結婚すると言ったものの姉は別の人と結婚した。付き合っていた彼ではないことに驚いたが、その相手のおかげでレストランはどれも閉店することなく、三号店も当初の予定より遅れてにはなったが無事にオープンした。

 大林さんとの縁を切り、息子さんとの結婚話も結局はなくなった。

『だからね、可南子はお腹の赤ちゃんのことだけ考えなさい』

 さすがに綾人に連絡をしようかと思ったが、彼はアメリカで訓練中だ。もしかすると川嶋さんと正式に婚約ないし結婚したかもしれない。

 なにより、最後の別れ方を考えたら彼に会わせる顔などない。綾人の子どもだと信じてもらえないだろうし、彼はもう別の人生を歩んでいる。

 両親や姉夫婦に迷惑をかけながらも、綾人には連絡せず私はシングルマザーの道のりを選んだのだ。

 凌空を生んだことを後悔していない。凌空のいない人生なんてもう考えられない。父親がおらず、会わせてもあげられないのは申し訳ないけれど、たくさん父親の話はしてあげよう。

 あなたのお父さんは、誰にでも優しくて、かっこよくて、素敵で……飛行機のパイロットとして空を飛んでいるだって。

『ひこうき、みる!』

 昼寝から目覚めた凌空は興奮気味に私に話してくれた。綾人との約束は本当みたいで、しっかり覚えているらしく目をキラキラさせている。

 綾人と凌空を会わせるのが怖い。でも凌空のこの笑顔を私は守らないと。

 意を決し、私はスマホを手に取る。綾人から送られてきたシフト表をじっと見て、休みが取れそうな候補日をいくつか打ち込み、おそるおそる彼に返事をした。
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