別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
第三章 空知らぬ雨のプロポーズ
 八月も後半に差しかかった平日、朝から外の気温は高めだ。天気予報も晴れ時々曇りで、雨の気配もない。エアコンをかけた部屋で朝から私は大忙しだった。

「いやー」

「ダメ。ちゃんと塗らないと痛くなっちゃうよ!」

 顔を背け抵抗する凌空に子ども用の日焼け止めクリームをしっかり塗っていく。おとなしくつけてくれるとは思わないが、首筋を覆う日よけカバー付きの帽子と首に巻くタイプの冷却タオルは用意している。

 ここまで念入りにするのは、綾人から『暑さ対策をしっかりしてくるように』と事前に連絡をもらったからだ。いったいどこに行くつもりなのかと尋ねたが、『飛行機がよく見えるところだよ』とはぐらかされ、結局行き先はわからないままだ。

 その時インターホンが鳴り、凌空は反射的に「はーい」と言いながら玄関に向かう。鍵をかけているとはいえ、誰が来たのかわからないからむやみに返事をしてドアのところに行かないでほしいと伝えているのに、なかなか難しい。

 今日は、相手が誰なのか予想はついているが、念のため確認して凌空の後に続いて、ロックを外す。

「おはよう」

 現れたのは綾人だ。テーパードパンツにストライプのシャツを組み合わせ、シンプルだが相変わらず上品にまとめている。

 凌空は彼を覚えているのか覚えていないのか、不思議そうな顔で彼を見つめた。

「ごめんね、あと少しだけ待ってて」

「慌てなくていい。少し早く来すぎたな」

 綾人に謝罪し、私は凌空を抱えてリビングに戻る。
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