別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「るさーい」

 音がすごいので凌空は手で耳を塞いだ。そう言いながら凌空は空に釘づけで、嫌なのではなく大きい音 だということを訴えたいのだろう。

 しかし、改めて見ると空港から並んでいる飛行機を見たのとはまた随分と印象が違う。迫力も音も、感じる大きさも。

 真上を飛んでいくのを凌空と共に目で追う。飛行機はもちろん改めて飛行機という乗り物を操縦する綾人のすごさを目の当たりにした気がする。

 クルーズはあっという間に終わりと迎えた。

「りく、もっとひこうきみるー! おふねのる!」

 しかしどうやら凌空はクルーズが終わるのに 納得できないらしい。完全に駄々をこねる凌空に綾人は苦笑を浮かべる。

「また今度な」

「おふね……」

 未練がましそうな凌空に手を伸ばすと彼はあっさり、こちらに身を委ねてきた。

 背中を軽く叩くと、私の肩に甘えるように顔をこすりつけてくる。

「うん。楽しかったね。凌空、飛行機も船も大好きだもんね」

 凌空は小さく頷き、少しだけ落ち着きを取り戻した。

「どこかで休憩した方がいいな」

「うん」

 このまま家路につくことも考えたが、凌空のことを考えたらここは綾人の提案に乗るべきだ。

 凌空をトイレに連れていった後、子連れ歓迎となっているカフェに入る。お昼時でそれなりに混んでいたがすぐに席に案内された。ガラス張りで敷地内にある緑が目に入り、ゆったりとした空間にホッとひと息つく。

 ぐずっていた凌空はジュースを飲んで元気と機嫌を取り戻す。
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