別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません

　目の前の綾人は、付き合っていた時よりも貫禄がついたとでもいうのか、顔立ちやまとう雰囲気に大人っぽさが増した気がする。けれど、こうやって真っ直ぐなところは変わっていない。

「やっぱり綾人はすごいね」

　付き合うときもそうだった。一途で迷いがない。あんな別れ方をして、それでも自分のことをここまで想い続けてくれているって誰が想像できただろう。

「ただ可南子のことが好きでたまらないだけだよ」

　柔らかい表情に視界が滲む。私に向けてくれる綾人の優しい笑顔が大好きだった。

「それで、返事は？　俺の奥さんになってくれる？」

　彼の問いかけに、小さく頷く。

「はい。私でよければ……凌空と一緒に綾人のそばにいさせてほしいです」

　いいのかな。こんなことを望んだらばちが当たりそう。

　不安になりながら答えると、力強く抱きしめられた。

「絶対にあきらめないつもりだったけれど、可南子に付き合ってほしいって言った時と同じくらい緊張した」

　大きく息を吐き、綾人が脱力したのがわかる。さっきまでの強気な態度とは一変した彼に、目をぱちくりとさせた。

「それは言いすぎじゃない？」

　軽く答えて、交際を申し込まれた時も同じようなやり取りをしたのを思い出す。

「付き合う時も似たようなやり取りをしたな」

　思い出したのは綾人も同じだったらしい。目が合った瞬間、彼の顔が近付いてくる。当たり前のように目を閉じると、唇に温もりを感じた。