別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
 久しぶりのキスは優しくて甘い。触れるだけの口づけに、胸が高鳴って苦しくなる。

 ゆっくりと唇が離れ、目を開けると、至近距離で綾人と視線が交わる。次の瞬間、言い知れぬ恥ずかしさが全身を駆け巡り、動けなくなってしまった。

 こういう時、どうしたらいいんだった?

 あまりにも久しぶりのキスに 真面目に考えてしまう。戸惑いを隠せずにいる私に対し、綾人が小さく噴き出した。

「初めてキスした時も可南子はそうやって目を丸くさせてたな」

「そ、そうだった?」

 思わぬ指摘に、つい切り返す。綾人はどこか嬉しそうだ。

「ああ。だからすごく焦った。嫌だったのかって」

「い、嫌じゃなくて……」

「うん。照れているだけだってわかって、安心した」

 言いながら綾人は私の頬を撫でると、額に口づけを落とす。反射的に目をつむったら、瞼の上に唇が寄せられた。次に頬、鼻筋とキスをされ、緊張しつつ受け入れる。

 初めてキスをした時のことを、綾人も覚えてくれていたんだ。彼にとっては、きっと初めてじゃないのに。私は全部、綾人が初めてだった。

 キスに慣れない頃、そうやって身を硬くする私の気持ちを少しでも和らげるためなのか、綾人は私をどこまでも丁寧に扱ってくれた。そんな綾人だから、私も彼を大切にしようと思った。会うたびに好きになっていった。

 目を開けると、すぐそばに綾人の顔があり彼はゆるやかに目を細めた。
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