別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「好きだよ。可南子を愛してる」

 胸がぎゅっとしめつけられる。

 再び唇が重ねられ、心なしか先ほどよりも長く遠慮がない。ただ押し当てるだけではなく、離れるか離れないかのギリギリの距離で角度を変え、緩急をつけながら何度も唇を合わせられる。

 この感覚を私は知っている。懐かしくて愛しくて、目の奥が熱くなった。

 上唇に軽く音を立ててキスをされ、下唇は食むようにして優しく挟まれる。濡れているのは自分の唇なのか、相手のものなのか。
 ついばむような口づけは次第に熱を帯びたものになっていった。リップ音の合間に、小さく吐息が漏れる。

「ふっ」

 呼吸をするタイミングが掴めなくて、情けない。主導権はずっと綾人にあって、私は受け入れるだけだ。でも彼になら安心して身も心も委ねられる。

 これは、もしかすると夢なのかな?

 何年ぶりかの甘い口づけに、過去と現在が混同して、わけがわからなくなる。

 唇が熱い。それに呼応してちりちりと焼けるような焦燥感がどこからか湧いてくる。なんとなく、これ以上口づけを続けるのが怖くなった。

 綾人の肩を軽く押してキスを終わらせようとしたら、逆に腰に腕を回され、より密着させられる。

 そちらに気を取られていると、唇のわずかに空いた隙間に舌が添わされた。驚きで反射的に肩を竦めてしまう。

 すると綾人はそっと顔を離して、改めて私を優しく腕の中に閉じ込めた。目の前に綾人の厚い胸板があって、顔をうずめる。匂いと温もりに安心する一方で、なんだか悪いことをした気持ちになってしまった。
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