別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「まぁ、先に子どもがいる時点で、あまり説得力はないかもしれないな」

 けれど、なにげなく続けられた綾人の言葉に胸が軋む。彼は笑っているが、私は笑えなかった。

「凌空のこと、ごめんなさい。びっくりしたよね」

 綾人が結婚を強く希望するのは、凌空の存在もあってなのだろう。他人の子どもだと思って接していた凌空が、自分の子どもだと知った衝撃は計り知れない。

 綾人は一瞬私から視線を逸らし、考える素振りを見せた。

「正直、驚いた。でも、どちらかというと嬉しい気持ちの方が勝ってる」

「え?」

 綾人は記憶をたどるように語り出す。

「可南子と再会した時、凌空を見て可南子に似ているって思った。それと同時に可南子は別の男と結婚して家庭を築いているんだって思ったら複雑だった」

「そ、そんな風には見えなかったけど?」

 うろたえっぱなしの私に対し、綾人は平然としているように感じた。あの時は彼の態度に救われたのも事実だ。

 しかし綾人の中ではどうやら違っていたらしい。

「見せないようにしていたんだよ。あんな状況でも可南子の前ではカッコつけたかったんだ」

 ぶっきらぼうに話す綾人に、素の部分を見た気がする。彼は昔から、周りに気を配りながらもどこかで無理していたところもあった。

「でも、今相手はいないって知って、可南子への気持ちが抑えられなかった」

 ぽつりと呟かれ、改めて綾人を見る。彼の指先が私の頬を撫でた。
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