別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「もしも凌空が俺の子じゃなかったとしても愛しく思うし、大事にするよ。誰よりも愛している可南子の子どもだから」

 事実、迷うことなく凌空は綾人の子どもだ。けれど、それほどまで覚悟を持って結婚を申し込んでくれた綾人に胸が張り裂けそうになる。

「ありがとう、綾人」

 声が震えて、喉の奥がぎゅっと締まる。感情が昂りそうになるのを抑えて、私は口を開いた。

「あの、ワガママだとは思うんだけれど……結婚するなら、私よりも凌空との時間を取ってほしいの」

 今まで凌空にはなかった〝父親〟という存在をどう受け止めるのか。いつも一緒にいる母親に加え、凌空にとって同じ時間を過ごす相手になる。

「もちろん、そのつもりだよ。今日みたいにまた三人で出かけよう。凌空の気持ちを大切にして歩み寄るから、可南子もまた凌空のことを教えてほしい」

「うん」

 さっきから綾人の心遣いに泣きそうだ。凌空が綾人を父親だと受け入れるのも、今日の様子からそこまで時間がかからないかもしれない。

「凌空、そろそろ起こすね。あっちの部屋にアルバムをしまっているからついでに取ってくる」

 そろそろ起こさないと、今度は夜眠れなくなる。隣の部屋に足を運ぼうとしたら、不意に綾人に手を取られた。

「可南子」

 どうしたのかと尋ねようとしたら、すぐそばに綾人の整った顔があって口づけられる。

「凌空が起きたら、できないと思って」

 ゆっくりと離れた唇から苦笑まじりに漏らされた。
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