別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
 目を白黒させていると、綾人がニヤリと口角を上げる。

「それとも凌空の前でキスしてもかまわないのか?」

「ダ、ダメ!」

 照れながら反射的に返す。妙に意識してしまい心臓がうるさい。そんな私を宥めるかのように頬にキスをされた。

「冗談だ。ただ、夫婦のスキンシップは毎日大事にしたいと思っているから、そのつもりで」

「毎日って……綾人、泊まりがけでいないこと多いんでしょ?」

 ついかわいげのない切り返しをしてしまった。パイロットの勤務形態は変則的で、国際便を担当する時は、現地で泊まるのを含め四、五日は帰ってこられないと聞いている。

「そうだな。だから離れる前は、その分たっぷり愛させてもらわないと」

 再び腰に腕を回され、彼の方に抱き寄せられる。これではいつまで経っても凌空を起こしにいけない。さすがに抗議しようとしたら、切なそうな表情をした綾人と目が合う。

「可南子や凌空の気持ちは尊重するつもりだが、極力早く籍を入れて一緒に暮らしたい」

 お互いに仕事のシフトが違うので、今日の予定を擦り合わせるのもそれなりに大変だった。次に会えるのはいつなのか。

 綾人の気持ちが伝わっていて、今度は素直に頷いた。

「うん」

 私も、綾人と少しでも一緒にいたい。今の彼をもっと知りたいし、できるなら支えたい。

 今度は真正面から彼のキスを受け入れる。名残惜しく唇が離れ、結局私と綾人ふたりで凌空を起こしにいくことになった。
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