別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
第四章 空際で交わる過去の想い
『可南子、久しぶり! 元気にしてる?』

 【前橋莉愛】の文字がディスプレイに浮かび電話を取ると、大学生の頃と変わらない、明るい声が聞こえてきた。

「元気だよ! 莉愛こそどう?」

 相手は大学時代からの親友、前橋――岩井(いわい)莉愛だ。今年の初めに職場の先輩と結婚し、名字が岩井になった。

 久しぶりの彼女からの連絡に嬉しさで顔がほころぶ。

『元気よ。突然連絡したのはね、私の結婚式に来ていた高校の時の友達が、今度結婚することになって、結婚式で使う動画の作成や編集をぜひ可南子に頼みたいって。私の結婚式で流れるムービーがめちゃくちゃよくて、結婚式を挙げるならお願いしたいってずっと思っていたらしいよ』

「え、嬉しい!」

 莉愛から カサブランカを通し依頼があり、彼女の結婚式の映像関係の編集はすべて私が手掛けた。オープニングやエンディングムービー、さらに新郎新婦の生い立ちを紹介するプロフィールムービーなど、こだわりを入れて最高のものを作ったと自負している。

『また、カサブランカに可南子指名で依頼があると思うから』

「ありがとう」

 お礼を告げると、莉愛は話題を変えた。

『凌空は元気? 可南子もいい人いたら考えなよ?』

 そこで言葉に詰まる。莉愛には、凌空の父親や綾人と別れた経緯などを唯一話していた。

「実は――」

 綾人と再会して、凌空が彼の息子だとバレたこと。プロポーズをされ、結婚を考えていることなどを手短に説明する。
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