別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
『なにそれ、すごいじゃない。パイロットになった彼が迎えにきたわけでしょ?』

「迎えにきたって……偶然会っただけで」

 興奮気味の莉愛に私はおずおずと返す。

『でもずっと可南子のことを忘れられずにプロポーズだなんて素敵じゃない。さすが進藤くん!』

 莉愛は、綾人と別れた経緯を話したら私より怒って泣いていた。シングルマザーとして子どもを育てることを報告したらものすごく心配してくれた。

 今は大学生の頃みたいに頻繁に会うことはできないが、かけがえのない友人だ。

『可南子と進藤くんが付き合っていた頃、周りもうるさかったしね。私もよく聞かれたわ。進藤くん狙いなのか知らないけれど、あのふたりはうまくいっているのかとか、男の方は忙しいのに、彼女はそれでいいのか、とか』

 まさか私の友人として莉愛がそんな目に遭っていたとは知らなかった。

『でもね、私はなにも心配していなかった。別れたのも事情があったことだし……進藤くんが可南子のことを想っていてくれて嬉しいよ』

「莉愛」

 声が震えて、目頭が熱くなる。それを察したのか、莉愛が電話の向こうで大きく笑った。

『今度、そっち行ったらまた連絡するね。凌空と進藤くんも一緒に会えるのを楽しみにしてるよ』

「うん」

 それから他愛ない話をして、電話を切る。綾人と別れて、私はひとりになったと思っていたけれど、そうじゃなかったんだ。

 電話を切った後、少しだけ仕事をしようと作業用のデスクに向かう。凌空はすっかり夢の中だ。私早く寝ないと。明日は綾人の実家にお昼から凌空と挨拶に行く予定になっていた。
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