同僚に研究と彼氏を盗られて田舎で鉱物カフェしていたら出会った、溺愛とろあま御曹司
「あのう……」
「はい?」
「私、変でしたよね、こんな……ベラベラと石のこと語り出して」
「いや? 帆夏さんが何かに熱意を向けられているのを聞けて、楽しいです」
「ほんと……ですか」
「はい」

私は研究を辞めたダメな女と思われているかもしれない。でも、石のことでヒートアップする変な女扱いされなかった! 
よかった……薄荷水をぬったみたいに胸がスーッとしてわだかまりが溶けていく。
今日の北園さんはいっしょに過ごしやすい。

「帆夏さん、もうひとつ飾っている標本についても、教えてほしいな」
 
答えたい。北園さんが知りたがってくれるなら。
胸のあたりで極楽鳥のタップダンスが始まった。
これはなに? やっと鉱物カフェっぽいことができたから? 
それとも、こんな魅力的な人が私と話をするから?
解説するのに集中しなきゃ、心が弾む理由は後回し。

「ロードクロサイトです、別名をインカローズ。まさに朝焼けの中の薔薇色──」

そうやって店内の標本についてお話をした。
良い話し相手だ。彼のカップから紅茶がなくならなければいい、そう思ってしまった。
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