同僚に研究と彼氏を盗られて田舎で鉱物カフェしていたら出会った、溺愛とろあま御曹司
お皿にとってきたご飯はどれも美味しそう。
香草サラダは、ところどころスミレに似たお花が混ざってて、目に鮮やか。噛めばシャクシャク瑞々しく、ビネガーの酸味が葉ものによく絡んで、ぺろりと一皿なくなってしまった。

さすが北園さんが選んだ場所だ、美味しくて次のメニューも食べるのが楽しみ。
お皿によそっていた生サーモンのテリーヌを口にする。ごく薄い卵焼きが巻かれていて、ぺりぺりと口の中で花びらがほぐれる触感。
ぺったり濃厚なサーモンの旨みが舌の上に広げられる。上顎にあて舌で潰すたび、ほぐれたサーモンから程よい塩気が滲みでた。

「んー、美味しい!」

唇をきゅーっとすぼめて、今味わった美味を逃したくない! と感激していたら、北園さんの視線に気がつく。
私をじーっと見てたみたい。
え、私そんなに変な食べ方してた?
お料理の味に夢中になってしまって、いかに素敵な北園さんといえども思考から外れていた。

「私、おかしいところでも……?」
「いやまったく。でも面白いと言えばそう……なのかな?」

お、おもしろい? 
うわあ、私おいしいからって滑稽なくらいご飯頬張ってたんだ。

「誤解しないで。おいしそうに食べてる人を見ると、食事がおいしくなる。それに僕は、帆夏さんがおいしそうに食べているのをしっかり見たかったんだ」
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