同僚に研究と彼氏を盗られて田舎で鉱物カフェしていたら出会った、溺愛とろあま御曹司
「は、はぁ……?」
「いつも僕がご馳走になる側で、君は提供側。今初めてものを口にする君を見たんだよ。新鮮だ」
「私だってご飯食べますよ。おいしいもの大好きだし」
「うん。よくわかったよ。安心した」
「あんしん、ですか。ご飯をたべてるのが?」
「まぼろしじゃないんだな、とかご飯をたべておいしいと思ってくれるんだな、って。最初の頃お店に行った時の帆夏さんは、もっと地に足がついてない、ふっと風に吹かれてしまいそうな感じがしたから」

言い得て妙だな。
私は、風に吹かれるようにあの地に行って、おばあちゃんの人徳のおかげで軽々しくカフェをはじめた。
長年の思いや苦労はこもってないし、リサーチもしていない。
うまくいかなくても当たり前だと思っていた。

うまくいかないままで叔父さんから手を引かれたら、また吹かれるようにどっかに行っちゃえばいっかと、うっすら考えていた。

北園さんが、興味を持って私の鉱物カフェに通うようになるまで。

気に掛かっていたこと聞いておこうか。
おいしい料理に胸あたためてもらえるうちに。

「きちんと訊きたかったんで、いいですか? 北園さんはどうしてこんな風に私をデートに誘ったんですか」
「直球だな……」
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