同僚に研究と彼氏を盗られて田舎で鉱物カフェしていたら出会った、溺愛とろあま御曹司

お気に入りの縁側で、スケッチブックの上に色鉛筆を広げた。
熱帯夜を、私はお店の新メニューを考え過ごす。
北園さんに相談した内容を思い出して色や味を考えていくのは悩ましくも楽しい。

スケッチブックの上には、琥珀糖を入れた飲み物のアイデア画いくつも並ぶ。
ごろりと寝返りを打てば、ハンガーにかけている服が目に入った。

涼晴さんに奢ってもらった一式。私はこれを戦闘服、と呼んでいる。
あれから、お休みに涼晴さんと『デート』へ出掛けた。
そのたびクリーニングに出した戦闘服、を着て行った。
涼晴さんは何度か私を着替えさせようと服のお店へ連れて行こうとしたけど、またお金を使わせるのは気が引けるから断って、私は戦闘服を着まわしている。
 
ただ、季節が進めば通用しなくなるだろう。
そのときまだ私は涼晴さんと会い続けているのかな?

花世ちゃんが遊びにきた時からかわれた。
「ほのさんは白くてちっさな花みたいな、守りたーくなるっていうか保護しなきゃ! って感じあるもん。それで北園さんを射止めたんだ〜」
御曹司に熱をあげさせてるって、私が涼晴さんに愛されまくってるだって。
それは恋愛脳で楽しくフィルターかけすぎだよって言ったけど。

『デート』のたび、近づくものがある気もする。
こけないようにって、段差の高い階段で腰を支えられたり、車道側じゃなく歩道側を歩きなよって、肩を抱いて歩道側に寄せられたりしていくうちに。

甘いそれらについて、もっと気持ちを整理しようとした矢先、すごく痛いものが喉元に突っかかる。

康二さんと世田さんの絡み合った姿や、空っぽの引き出しの中身。

久々に、思い出したそれに吐き気がしてきて。
私はメニュー考案の道具をほったらかし、即行で布団にくるまった。
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