同僚に研究と彼氏を盗られて田舎で鉱物カフェしていたら出会った、溺愛とろあま御曹司
「じゃあここでお茶ね」

世田さんの声? 
一緒なのは研究所時代に見たことのある、他部署の人たち。休み時間よく世田さんと話をしていた面子だ。
同じ県にある繁華街だし、可能性はあったけど出くわすだなんて。

私は彼女らに見つからないよう、ぎゅっと席で丸まった。
聞きたくもないのに、世田さんの声が、会話の内容が流れてくる。

「えー! 未小夜(みさよ)あの研究で講演するの?」
「そうよ、北園グループが主催するシンポジウムに通ったの」
「冬に雑誌に掲載した論文のだよね?」
「ええ、それよ。北園グループは、特に北園自動車なんかは興味ある内容だと思ってたのよね。うまくいったら共同研究をもぎ取れるかも」
「そうなったら関わってるうち御曹司に気に入られちゃたりして」
「ふふ、いいわね。雑誌で見た時イイ男だって憧れたもの、極上の男だから、もしもイケるならお近づきになるつもり。彼なら一夜限りでも相手にしてほしいわぁ」
「わー! 未小夜、そこまで御曹司好みなんだ〜」

冬の掲載……たぶん、私から盗った研究だ。
しかも何? 涼晴さんにまで近づこうって? 
……するんだろうか、康二さんにしたみたいに。
私の知らないところで彼女は涼晴さんに接近を試みるんだろうか。
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