同僚に研究と彼氏を盗られて田舎で鉱物カフェしていたら出会った、溺愛とろあま御曹司
スプーンが震えるから、置いてぎゅっと目を瞑る。
各席の仕切りが高いから、世田さんたちは全然私に気づいていない。

「帆夏さん?」

席に戻ってきた北園さんが、私の様子を見てそっと声をかけてくれた。

「すみません……少し、気分が」

世田さんたちはなおも大声でおしゃべりを続けている。

「よかったわね、アレ、未小夜新しいことしたのねーって感心したのよ」
「まあね、ちょっと暇つぶしにはじめて、わたし的にテキトーに進めてた研究が化けたっていうかぁ。ごくごく密かで時間もかけずにやったしょーもない研究だったんだけど、論文はしっかりまとめたから掲載してもらったっていうかぁ」

苦しい。
盗ったばかりじゃなく、一生懸命やった研究を盗作者に『テキトーにやった』『しょーもない研究』とサゲられたのが、いっそう怒りの黒い炎を煽る。
ふざけんな! あなたはテキトーにすらその研究をやってない!
『しょーもない研究』? ならなんで盗んだのよ?

早々お茶を切り上げた世田さんたちの声が去っていったけど、私はまだカフェラテに手をつけれずうつむいていた。

「帆夏さん、とった部屋はここの上階だし、飲み物はいいから少し休もう?」
「……はい」
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