同僚に研究と彼氏を盗られて田舎で鉱物カフェしていたら出会った、溺愛とろあま御曹司

やわらかなリネンの上へ寝かされた。こういうスイートに入ってはじめてだ、ベッド使うの。
目に手の甲をあてて、やっと涙を堪えている私を、横から涼晴さんが気遣ってくれる。

「ここでゆっくりするといいよ、僕なら気にしなくていいから」
「すみません……」
「……!」

声に、悲しみが滲んじゃった。たぶん、単に気分が悪いんじゃないって、バレた。
 
「帆夏さん、僕が席を立ってる間に何があったの?」
「……ちょっと、苦手な知り合いが、ばったり居て」
「君がそんなふうになるなんて……職場関係とか?」

答えたくない。「ごめんなさい」とだけ、こぼす。

「……研究所を辞めたのは、そういうあたりから?」
「……ごめんなさい……」

これも答えを言えそうにない。
嗚咽が出そうになって、手を目元から退け涼晴さんの様子に驚いた。
初めて見た表情。
すごく冷たくて触れれば切れそうなほどの、怒り?

「涼晴さん?」

スッと、涼晴さんから怒気が消えた。
すごく労った目で見つめられる。

「なんでもないよ。……それより帆夏さん、ちょっと起きてみて」
「え……こ、こう……ですか」

片手を支えに上体を起こして──

「!? りょ、涼晴さん」

ふわっと包み込むように、涼晴さんに抱きしめられた。

「こうやるの、試してみて……いやなら振り払ってくれればすぐやめるから」
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