同僚に研究と彼氏を盗られて田舎で鉱物カフェしていたら出会った、溺愛とろあま御曹司
「私……わたし……」

いやじゃない。
コロンかな? マスカットとサワーを合わせたような爽やかな匂いがして、ほっこりする。

涼晴さんが優しくリズムをとって背中をポンポンしてくれた。
鼓動みたいなテンポ。

スーツの生地に顔をくっつけて、ネクタイを眺めていると、与えられる振動に私の心臓もそろっていくみたい。

感謝を伝えたくて見上げた。
絡んだ視線の先で涼晴さんが苦笑する。

「弱った姿を見せたあとに、そんな顔するもんじゃないよ。悪い男なら、このまま君をいいようにしてしまうんだから」

はじめてだな、涼晴さんが男女を仄めかしてくるのは。
普段なら、私、もっとこの言葉で警戒した。流して有耶無耶にして、色めいた雰囲気から逃げてた。
でも、今はさっきの世田さんが言った台詞の一つがチリッと引っかかっている。

── イケそうならアタックするつもり。彼なら一夜限りでも相手にしてほしいわ。

涼晴さんまで、世田さんの毒牙にかかっちゃったらヤだな。
ありえないって思いたいけど。だって、現に康二さんは……。

それに私はどこかで思ってる。
涼晴さんになら、一夜限りでいいから、だから……。
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