同僚に研究と彼氏を盗られて田舎で鉱物カフェしていたら出会った、溺愛とろあま御曹司
「涼晴さんなら、いいですよ。あなたみたいに素敵な人の『いいようにする』ってどんなものか興味があるくらい」

背にあたる手が、ぎこちなく強張った。

「ほんとうに? 知りたい? 帆夏さんが知りたがってくれるなら、僕は教えちゃいたい。でも、弱みにつけ込むズルい男って、思うんじゃない?」
「涼晴さんがこうやって近くにいてくれると嫌なことが遠ざかります。つけ込むどころか、私の方がいま涼晴さんを利用している……」
「僕の罪悪感を減らすため、そんなこと言って。つくづく健気だな君は。そんな君の役に立てるなら僕は、どう扱われても本望だ」

真剣に訴える声が、一段低い囁きになった。
 
「利用してくれていいよ、君なら、いくらでも」

涼晴さんが、唇で頬に触れる。
乾いていて、やわらかい。彼の吐息の熱まで感じる。

「これ、いやじゃない?」

嫌どころか、うっとりしちゃう。

「気持ち、いいです」

視線を送れば、影が落ち、涼晴さんの顔が近づいてきた。
今までで一番、近くに彼が。
敏感な感覚器の唇で、触れてきた涼晴さんの唇を堪能する。
ふわっと柔らかくて、唇が沈み込みそうなのに、押しあってめくれて擦れあう内唇はぬるりとなめらか。
キスはそのまま、角度や深さも変えて(たの)しむものになっていった。

「……はッ、君に、こうできるなら、僕はもう悪い男でいい」
「涼晴さんは、悪い男の人なんかじゃないです」
「ありがとう、でもこのあとはどうかな。僕はここから先どんどん歯止めが効かなくなるよ。いやになったら、早めにおしえて」
「涼……っ」

また唇が塞がれる。
キスで体の力が抜けていくうち、シュル……とネクタイが解ける音がした。
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