同僚に研究と彼氏を盗られて田舎で鉱物カフェしていたら出会った、溺愛とろあま御曹司
御曹司との巻き返し

涼晴さんと体を重ねた日から、二週間。
最初の一日は電話やトークルームの着信があったけど無視していたら静かになった。
それに、そんなにコンタクトをとりたいならお店という手段があるのに、涼晴さんはお店には来なかった。

一度抱いたら、ある程度満足したのかも。
時間が経ったら、つまらない女だったって、落ち着いてきたり?

チリン、と鳴ったお店のチャイムに一瞬期待して──期待した通り涼晴さんがいた。

「帆夏さん、僕と来てくれ」
「あ、あの!?」
「君のために準備した。君の引っかかりを僕が解いてあげる。だから、今だけ僕と来て。これでダメなら、もう僕も君を諦めるから」

腕を引かれて、そこまで言うならと私は車に乗り込んだ。
ブティックに寄って高級そうではあるんだけど黒のスーツを着せられて、髪もメイクも上品にまとめられ、到着したのは。

「シンポジウム会場……北園グループ主催って」

涼晴さんとエレベーターに乗り込む。

「世田未小世の講演概要を読んだよ。……内容の端々や検証の仕方に、君を感じた。伊達に君の論文のファンはしてない。帆夏さん、あの研究は君のものだね?」
「……っ」

涼晴さん、気づいてくれたんだ。
だれも気にもとめてくれなかったのに、涼晴さんだけは。
涙が出そうなのは、嬉しいから?
そっと、肩に添えられた涼晴さんの手は力強い。

「彼女が講演するにあたって、穴がある。僕が追及したら合図だ、突いて瓦解させてやればいい。あの研究の真の主である君なら簡単なはず」
「涼晴さん……?」
「僕の全てで君をフォローする、だから、やるんだ。君を縛るものをちゃんと解いておいで」

会場まで上がったエレベーターを降りて、トン、と背をたたいて参加者席へ送り出される。
ウインクした涼晴さんは北園グループの来賓席に歩いていった。
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