同僚に研究と彼氏を盗られて田舎で鉱物カフェしていたら出会った、溺愛とろあま御曹司
◇
北園グループ主催の新素材シンポジウム。
順番が来て登壇した世田さんに、参加者席から感嘆の息が漏れたのを感じた。
才色兼備の女性研究者へ向ける目。
世田さん自身もそれを得意にしているらしい、いっそう背を伸ばし講演を始める。
聞けば聞くほど、私の研究だった。そこから実験データを毛ほど足した程度の。
あれ?
やっているべき試験をやっていない?
そっか、涼晴さんが言ってたやつだ。彼女の講演の穴。
私はわかる、わかるよ、涼晴さん。
離れた所の涼晴さんと目が合う、ふつふつ勇気が湧いてくる。
そのうちに、世田さんの講演が終わった。
司会がお決まりの質疑応答の時間だと告げ、涼晴さんが挙手して質問を持ちかける。
「大変興味深い素材です。つきましては僕が気になったのは強度の評価ですね、単にこの組み合わせだとここまでの値は出なかったと思うのですが、配合時に工夫された点はおありですか?」
「配合については特に、その材料と通常の工程だけで実現できています」
うんうん、とうなずいて涼晴さんはあっさり席に座った。
世田さんは胸を撫で下ろすと言った顔をしている。
次の質問は、というところで、私はすかさず手を上げた。
たぶん、涼晴さんから司会に手が回っているんじゃないか。私に質問が許される。
すっくと質問のため立ち上がった。
その私を見た世田さんが、顔色を真っ青にする。
「なっなんでアンタが……ここにっ」
北園グループ主催の新素材シンポジウム。
順番が来て登壇した世田さんに、参加者席から感嘆の息が漏れたのを感じた。
才色兼備の女性研究者へ向ける目。
世田さん自身もそれを得意にしているらしい、いっそう背を伸ばし講演を始める。
聞けば聞くほど、私の研究だった。そこから実験データを毛ほど足した程度の。
あれ?
やっているべき試験をやっていない?
そっか、涼晴さんが言ってたやつだ。彼女の講演の穴。
私はわかる、わかるよ、涼晴さん。
離れた所の涼晴さんと目が合う、ふつふつ勇気が湧いてくる。
そのうちに、世田さんの講演が終わった。
司会がお決まりの質疑応答の時間だと告げ、涼晴さんが挙手して質問を持ちかける。
「大変興味深い素材です。つきましては僕が気になったのは強度の評価ですね、単にこの組み合わせだとここまでの値は出なかったと思うのですが、配合時に工夫された点はおありですか?」
「配合については特に、その材料と通常の工程だけで実現できています」
うんうん、とうなずいて涼晴さんはあっさり席に座った。
世田さんは胸を撫で下ろすと言った顔をしている。
次の質問は、というところで、私はすかさず手を上げた。
たぶん、涼晴さんから司会に手が回っているんじゃないか。私に質問が許される。
すっくと質問のため立ち上がった。
その私を見た世田さんが、顔色を真っ青にする。
「なっなんでアンタが……ここにっ」