悪女は果てない愛に抱かれる
「お前こんなとこで何やってんの」
落ち着いた声に、闇を映したような深い瞳。
夜がよく似合う人だと、この場に全く関係のないことを思った。
彼が現れるなんてまさか予想もしていなかったはずなのに、なぜか驚きはしなかった。
この前と同じように、初めからこうなることが決まっていたかのような……妙な錯覚。
彼の極めて冷静な振る舞いがそうさせているのかもしれない。
「間交差点で、事故があったのを知って……。もしかしたら大事な人が巻き込まれてるんじゃないかって……っ、その人と、昨日喧嘩したままずっと連絡取れないから、不安でっ、ここに来ちゃって……」
文脈がめちゃくちゃになりながらも、なんとか伝えようと言葉を紡ぐ。
「車の運転手と同乗者含め7人が重症、命に別状はなし。バイクに乗ってた奴は、意識不明の重体で病院に運ばれた」
「っ、……──」