悪女は果てない愛に抱かれる
大事な人と連絡がつかないという理由だけで、事故に巻き込まれたんじゃないかと過剰に心配して、現場までかけつけて。
挙句、不安のあまり道路脇に倒れ込んで。
違うとわかった瞬間、人目も憚らず泣き出す……とか。
わたし……なんて迷惑な女なんだろう。
冷静さを取り戻すと、今度は猛烈に恥ずかしくなってきた。
しかも、観月くん、そばにいてくれてるけど……。
──『あの女がどうかしたんですか?』
──『……いや。べつに』
──『なら早く行きましょう、上の連中を待たせてます』
──『……そうだな』
あのやり取り。
今思えば、間違いなく観月くんと、そのお付きの人の会話だった。
つまり観月くんは、一度は離れたあと、時間がないのにわざわざ戻ってきてくれたの……?
「っ、あの……ありがとう、本当に。わたしもう大丈夫だよ」