悪女は果てない愛に抱かれる

まだ冬には遠い季節とはいえ、夜は少し肌寒い。

タクシーから降りたとき、半袖一枚で飛び出してきたのを後悔したことを思い出す。


すごく、あったかい……。


わたしには大きすぎるジャケットが肩から落ちてしまわないように、そっとすそを合わせた。


ムスクの甘い香りに包まれる。



──『泣くほど大事な相手なら、それをそのまま言えばいいんじゃねえの』



わたしが、喧嘩したって言ったから、だよね……。


鼓動が高鳴るのを感じながら、夜の街に消えていく背中を見送った。

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