悪女は果てない愛に抱かれる


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スマホが鳴ったのは、あれから約一時間後。

タクシーを飛ばしてもらった道を、ひとり歩いて帰っていたときだった。


わたしは目にも止まらぬ速さで応答ボタンをタップした。



「もしもし安哉くんっ!?」

『……っ、うるさー……』


「安哉くん……生きてた……」

『はいはい悪かったな生きてて』


「今どこいるのっ?」

『いやこっちのセリフだし。自宅戻ったらお前いないし、ついに家出したかと思ったわ。それか誘拐』


「い、家……?」


呆気に取られる。


わたしは間交差点で事故に遭ったバイクが安哉くんじゃないかと家を飛び出して。

そのあいだに、安哉くんは帰ってきてたってこと……!?



まさかのすれ違い……。



「安哉くんのバカ……さいあくさいてー……」

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