悪女は果てない愛に抱かれる
やっつけたのに、清々しい気持ちなんてやってこない。
後味は、やってしまった……という嫌悪だけ。
ああ、もうやだ、本当に可愛くない……。
じわりと目の奥が熱くなる。
人目を集めてしまったし、そそくさと退散しよう……っ。
「あのっ、待ってください!」
踵を返そうとしたとき、誰かに手を掴まれた。
見ると、絡まれていた女の子だ。
「助けてくださってありがとうございましたっ、本当に助かりました!」
「いえ、わたしは何も……」
「まじでめっちゃかっこよかったです!! その制服あたしと同じ高校ですよね、何年生なんですかっ!?」
「え? えーと……2年、です」
「先輩だったんだ! あたし1年のルリって言います!」
彼女──ルリちゃんにぐいぐい迫られるまま後退し、わたしの背中はついに商業ビルの壁に激突した。
「先輩の名前はなんて言うんですかっ?」
「名前……ええと……今井です、今井あゆあ」