悪女は果てない愛に抱かれる

それから、授業中も休み時間も観月くんのことが四六時中頭から離れなかった。


あのビルにはもう行かないと宣言したものの、ジャケットを借りたせいで、返す機会が必要になってしまった。


ジャケットは今朝学校に行く前にクリーニングに出してきた。

高級スーツだったので専門コースでお願いしたところ、仕上がりは一週間後と言われた。



だから、一週間後の月曜日にお礼を兼ねて渡しに行くのを最後にしようと思っていた……のに。


わたしのせいで体調を崩したと知ってしまった以上、

一週間も知らん顔でやり過ごすのはいささか良心が痛む……ような……。




「今井、ちょっとい?」


終礼後、帰り支度をしていたら遥世くんにこっそり声を掛けられた。

そして、渡されたのは何かカードのような物。



「これ何?」

「うちの本部のエントランスキー」

「えっ」

「僕、夜から今日バイト入ってんだけど、体力限界だから一旦帰って仮眠取りたくて。だから、観月の様子見に行ってやってくんないかな」
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