悪女は果てない愛に抱かれる

「な……っええ!?」

「昨日は楓くんもルリも駆り出されてたから今日学校休んでんだよね」



遥世くんの言わんとしていることはわかるけど……。



「でもわたし完全に部外者だよ……?」

「今井のことはみんな信用してるからいい」

「……っ」


信用、という言葉がぐさりと胸を刺してくる。


わたしは桜家の直径の血を引く娘で、みんなのこと騙して一緒にいるんだよ。


それだけに留まらず、橘家の情報を横流しするために“橘観月”と寝ろ、との命令まで受けてるんだよ。

今のところ実行する予定は、まだないけども……。



「人のこと……簡単に信用しないほうがいいよ……」

「ん? なんて?」

「……ううん、なんでもない」



迷いながらもエントランスキーを受け取った。



「観月くん、病院とか行ってないの?」

「たぶんね。ぶっ倒れたあと、あの部屋に放り込んできただけだから」


「ええっ、それって大丈夫なの!?」

「それが心配だから一応見に行ってやってくんないかなって」

< 114 / 197 >

この作品をシェア

pagetop