悪女は果てない愛に抱かれる
ワインレッドのカーペット、左右に跨る大理石の階段、アンティーク調の鏡や絵画、それからシャンデリア。
……と、もう見慣れた景色がわたしを迎えてくれる。
相変わらず現実味のない場所。
ここに入ると、正常な判断力が失われていく気がするんだよね……。
コツ、コツ……とローファーの音を響かせながら階段をのぼる。
幹部様たちがいつもくつろいでいるのは、2階の角部屋。
扉の前に立つと、ふたたび足が竦んでしまう。
わたしが来たって、迷惑なんじゃ……。
そう思いながらも、ここまで来たんだし、と己を奮い立たせて、扉を3回ノックした。
少し待ってみても返事はない。
もう一度ノックしてみたけれど、結果は同じ。
「あのー……観月くん? いますか? 今井です……。もしもし〜……」