悪女は果てない愛に抱かれる
扉のすれすれまで耳を近づける。
……物音ひとつ聞こえない。
もしかして中で倒れてたりとか……。
その光景が頭をよぎって、さあっと血の気が引いた。
「観月くん……!!」
扉を思いきり開け放って部屋に飛び込んだ。
視界に収まる範囲に彼の姿はない。
そうだ。
観月くんはいつも部屋の隅にあるソファで本や資料を読んでたはず。
急いで移動すると、案の定。
ソファをベッドのようにしてぐったり横たわる観月くんがいた。
広いソファから、腕が、だらりと力なく落ちている。
……っ、生きてるよね?
駆け寄って、すぐさま頸動脈に指先を当てた。
よかった……っ、脈はある。
でも昔、安哉くんが、脈があるからって意識があるとは限らないって言ってたような。
「観月くん……声、聞こえる? 大丈夫……っ?」