悪女は果てない愛に抱かれる

「今井……あゆ? ゆあ? 先輩?」

「あゆあ、だよ。紛らわしい名前だよね……あはは」


生まれたとき、安哉くんの名前だけが先に決まっていた状態で。

せっかく双子だから似た響きにしたいというお母さんのワガママで、あんや、と、あゆあ、になったらしい。


物心ついたときから、わたしの名前、なんか「あ」いっこ多くない……?と思っていたけれど、やっぱり不便だった。

お母さんの変なこだわりのおかげで、名乗るときは必ず聞き返される。



いや、そんなことは今どうでもいいのだ。


わたし、今、もしや人生で初めて女の子に壁ドン&ナンパされている……?



「じゃあ、あゆ先輩って呼ぶね! お礼したいから着いてきてっ、お願い!」



壁にドンされていたかと思えば、今度は腕を引かれる。



「お、お礼なんて大丈夫だよ、わたしはただの通りすがりなので……っ」

「あたしの気が済まないからだめ! 美味しいケーキご馳走するね! あ、今日はお兄ちゃんもいるから、あゆ先輩に紹介するね!」

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