悪女は果てない愛に抱かれる

「そういうお前は、昨日はちゃんと帰れたの」

「あ、うん、おかげさまで! それに、観月くんのおかげでちゃんと自分の気持ち言えて、仲直りもできたよ、本当にありがとう」



……よし。

観月くんの無事は確認できたし、昨日のお礼も言えたし。


これでとりあえずミッションコンプリート。


観月くんの機嫌を損ねる前に、さっさと退散するとしよう。


あと、言い残したことは……。




「食べ物とか薬とか、ぜんぶここに置いとくね」

「………」


「あっ、それと。ジャケットありがとう! でも、わたしに貸したせいで体調悪化しちゃったんだよね。本当にごめんなさい……。なんか、わたしがここに来てから観月くんのお手を煩わせてばっかりで、本当に申し訳ないです……」


深く頭を下げる。


「ジャケットはクリーニングに出したんだけど、仕上がりが一週間後らしいから、また一週間後に来ます……。それじゃあ、これで失礼し──」



言葉が途切れてしまったのは、観月くんに手を掴まれたから。

そして。


「一週間も来ない気?」


……と、わずかに甘えをはらんだ声でそんなことを言われたから。

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