悪女は果てない愛に抱かれる

「観月……、っん、……」


呼びかけた名前は熱に呑み込まれ。

甘い感覚がじわりと広がる。


離れたかと思えば、角度を変えて再び落ちてきて。


「っ、……うぅ」


唇から伝わる温度が頭に達して、早くもくらくらし始めた。

全身が火照る。

観月くんの熱が移ったみたい。



指先が頬に触れて、表面をやさしくなぞった。

ただそれだけの仕草に、心臓がゆるく掴まれたようにぎゅっと苦しくなる。


──抗えない。

抗えないどころか、応えたいと思ってしまう。


わたしはたぶん、この人のことが好きなんだと思う。



「──あゆあ、」


不意に囁かれたその声に、なんの前触れもなく涙が溢れた。

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