悪女は果てない愛に抱かれる
視線が絡む。
観月くんの瞳の中にわたしがいる。
その奥に映るのは愛情なのか、それともただの欲望なのか。
涙で視界がぼやけていてよかった。
今はまだ……知るのが怖い。
見つめ合う時間が永遠にも思えたそのとき、黒い瞳がわずかに揺れて。
奥底に隠れている彼の本心が、一瞬、垣間見えた気がした。
あ……、どう、しよう。
固く鍵を掛けるつもりだった気持ちがあふれていくのを感じる。
暴かれたい、暴かれたくない。
矛盾するふたつの間で感情がかき乱される。
指先がわたしの涙の痕をやさしくなぞり。
それから、その部分に、静かに唇が触れた。
「……っ!」
均衡を保っていた天秤が、とつぜん、がたん!と音を立てて崩れる。
気づいたときには、観月くんのシャツをぎゅっと掴み、こちらに引き寄せてしまっていて。
「え……? っあ、ごめ……んなさ──」
慌てて手を離そうとしたのに、激しいキスで遮られた。