悪女は果てない愛に抱かれる

視線が絡む。


観月くんの瞳の中にわたしがいる。

その奥に映るのは愛情なのか、それともただの欲望なのか。


涙で視界がぼやけていてよかった。

今はまだ……知るのが怖い。


見つめ合う時間が永遠にも思えたそのとき、黒い瞳がわずかに揺れて。

奥底に隠れている彼の本心が、一瞬、垣間見えた気がした。



あ……、どう、しよう。


固く鍵を掛けるつもりだった気持ちがあふれていくのを感じる。


暴かれたい、暴かれたくない。

矛盾するふたつの間で感情がかき乱される。


指先がわたしの涙の痕をやさしくなぞり。

それから、その部分に、静かに唇が触れた。



「……っ!」


均衡を保っていた天秤が、とつぜん、がたん!と音を立てて崩れる。

気づいたときには、観月くんのシャツをぎゅっと掴み、こちらに引き寄せてしまっていて。



「え……? っあ、ごめ……んなさ──」


慌てて手を離そうとしたのに、激しいキスで遮られた。

< 123 / 197 >

この作品をシェア

pagetop