悪女は果てない愛に抱かれる
ケーキ……?
お兄ちゃん……?

もしかして、ルリちゃんのお家にご招待されようとしている?


人との関わりを絶ってきたせいで、慣れない展開にしどろもどろ。


JKってこれが普通なのかな。いやいや、助けただけで自宅に招待なんて……ええっ?

はたまた、ルリちゃんてお嬢様だったり?


せっかくの厚意を無下にするのも悪い気がして、とりあえずついていくも。

ここは橘家の支配下にある《橘通り》の中心部だと気づいた矢先に、ふと、ある可能性にぶち当たり足を止めた。



「ルリちゃんのお兄さん、ってさ……」

「うん? お兄ちゃんがどうしたの?」

「観月くんって名前だったりしないよね……?」



バクン、バクン。近年まれに見る激しい脈動が体を支配する。

心臓が耳元にあるみたい……。



「んーん、お兄ちゃんは違うよ。(かえで)って名前!」


あっさりそう言われ、ほっと安堵する。


「そうだよねっ、ごめんね変なこと聞いて」


そうだそうだ。あるわけない。

さっきの少女漫画的妄想につい引っ張られちゃった。……恥ずかしい。


ほらね、やっぱり。

わたしの人生に派手なイベントなんか決して起こらないのだ。
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