悪女は果てない愛に抱かれる
薬はあるけど、市販薬は気休めにしかならないだろうし……。
やっぱりお医者さんに看てもらって、点滴とかしてもらったほうがいい……よね。
頭が真っ白になっていたところに、テーブルの上のスマホが鳴った。
観月くんのだ。
手を伸ばしてみると、画面に表示されたのは『遥世』の二文字。
緊急事態だから、いいよねっ!?
思い切ってその画面をスライドする。
「もしもし遥世くんっ?」
『……え、今井?』
「どうしようっ、観月くんすごい熱なの! ぐったりしてて辛そうで、ど、どうしたら……」
『まじか、わかった。今そっちに医者を向かわせるから待ってて』
「っ、ありがとう」
『いや、こっちこそ見に行ってくれてありがと。僕も家に帰ったはいーけどなんか心配で寝るに寝れなくてさ、気づいたら電話掛けてた』
スマホの向こうで苦笑いしている姿が目に浮かぶ。
『じゃ、悪いけど医者が来るまでのあいだもうちょっとよろしく』