悪女は果てない愛に抱かれる

薬はあるけど、市販薬は気休めにしかならないだろうし……。

やっぱりお医者さんに看てもらって、点滴とかしてもらったほうがいい……よね。


頭が真っ白になっていたところに、テーブルの上のスマホが鳴った。


観月くんのだ。


手を伸ばしてみると、画面に表示されたのは『遥世』の二文字。


緊急事態だから、いいよねっ!?


思い切ってその画面をスライドする。



「もしもし遥世くんっ?」

『……え、今井?』


「どうしようっ、観月くんすごい熱なの! ぐったりしてて辛そうで、ど、どうしたら……」

『まじか、わかった。今そっちに医者を向かわせるから待ってて』


「っ、ありがとう」

『いや、こっちこそ見に行ってくれてありがと。僕も家に帰ったはいーけどなんか心配で寝るに寝れなくてさ、気づいたら電話掛けてた』



スマホの向こうで苦笑いしている姿が目に浮かぶ。


『じゃ、悪いけど医者が来るまでのあいだもうちょっとよろしく』

< 131 / 197 >

この作品をシェア

pagetop