悪女は果てない愛に抱かれる
通話が切れて、ひとまず胸を撫で下ろした。
電話を掛けてくれて本当によかった。
遥世くんにとって、それほど大事な友達なんだろうな……。
そういえば、楓くんのことは君付けで呼んでた気がするけど、観月くんのことは呼び捨てだよね……。
そんなことを考えながら、じっと観月くんの顔を見る。
息が浅い。
苦しそう……。
その髪をそっと撫でた。
──『あー、可愛い、もっと俺の名前呼んで』
ついさっきの記憶がよみがえる。
──『あゆあ』
「……っ」
観月くんが倒れなかったら、わたし、どうなってたんだろう……。
観月くんにとっては、遊びだったんだろうけど。
あんなに甘いことをされたら、忘れられなくなっちゃう……。
──ううん、大丈夫。
これは任務だから。
そう言い聞かせて。
わたしは今度こそ、自分の気持ちに固い固い鍵をかけた。