悪女は果てない愛に抱かれる
「みんなさ、あゆ先輩が思ってる以上に他人事なんだよ。あたしに好きとか可愛いとか言ってくれる人も、街であの場面に出くわしたってきっと助けてくれない」
「え……そんなことはないと思うけど」
「そうなんだって。実はね、あゆ先輩が声掛けてくれてくれる前に、偶然元彼があの場所通って目が合ったんだ〜。でも、ナンパ男の顔見るやいなや気づかないフリしてどっか行っちゃった」
すぐには言葉が出なかった。
その元彼さん、ちょっと酷くない……?
とは思いつつ、ルリちゃんの昔好きだった人を貶すのは違うと思って口をつぐむ。
そんなわたしを見て、ルリちゃんがくすっと笑った。
「ほら、今も大事に言葉選んでくれてるでしょ? たぶんだけど、あたしの元彼を悪く言うのは申し訳ないな〜とか考えてたんじゃないの?」
「……っ、え!」
「あははっ、やっぱり図星だ! ほんとにそういうとこ、だーいすき」