悪女は果てない愛に抱かれる
「えっ、そうなの?」
あの淡々とした感じの遥世くんに好きな人がいるのはちょっと意外だけど……。
「このクラスには30人もの生徒がいるんだよ? 絶対にわたしじゃないよ」
「えー? でも、優しくて運動神経よくて可愛い子って言ってたからあゆ先輩しかいなくない?」
「……。あの、おだてても何もあげられるものは持ってないよ……?」
「あゆ先輩がここにいてくれるだけで十分だよ! ってかおだててないし!」
どこまで本気かわからないルリちゃんの言葉を、まあまあ、と受け流してお弁当を食べ進める。
この会話の流れをどうにか変えなくては。
「あ、そういえば楓くんは元気? 最近姿見てない気がするんだけど……」
「あーお兄ちゃん? 元気も元気だよー。学校には来てないけど、毎日女の子とっかえひっかえしてる」
「あはは……。あの美貌と色気だったら女の子がほっとかないもんね」
「いい加減にしてほしいよ〜。妹のあたしが言うのもあれだけど超美形なんだから、観月さんみたく専ら観賞用のポジション築けばいいのに」