悪女は果てない愛に抱かれる

「えっ……、へえ〜、そうなんだ」


観月くんはそこにいるだけでオーラがすごいから、繁華街を歩いたら目立つこと間違いない。


容姿だけでも美しいという次元をとうに超えていてもはや怖いレベル。

姿を見た瞬間、誰もが高嶺の花だと瞬時に理解すると思う。



観月くんが他人をばっさりスルーしている様子はなんとなく想像できた。


ルリちゃんの言う“偶像”という表現がまさにぴったりだ。

容姿だけでなく、仕草や表情、それから声までも、すべての美しさが洗練されすぎている。


あまりに気高いからこそ、女性を侍らせて遊んでいる姿が似合わない。

似合わない、というか、まるでイメージが湧かない。



そう……わたしの知る橘観月くんは、そういう人だ。


だから……。


──『……あー、可愛い、もっと俺の名前呼んで』


あれはまやかし。

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