悪女は果てない愛に抱かれる
ラウンジの綺麗なお姉さんでさえだめだったのに、本来わたしなんかが相手にされるわけがない。
一度はもう来るなと言っていたのに、二度目も三度目もあっさり受け入れて。
わたしが弱っていると優しい言葉を掛けて、上着まで差し出して。
甘く触れて、名前を呼んで、キスをして……。
やっぱり、おかしい……よね。
ただの気まぐれだとか、熱のせいだとか。
そんな理由であれば、まだ“優しい”。
なにか……もっと、裏があるんじゃないの。
……例えば、わたしと同じように。
“桜安哉の妹”に近づくよう命令されていたとしても……なんらおかしくない。
「──てことで、あゆ先輩オッケー?」
背中が冷たくなったタイミングで顔をのぞきこまれ、ハッと現実に戻った。
「えっ……、うん!」
なんのことかもわからないまま、反射的に頷いてしまう。