悪女は果てない愛に抱かれる
「いやっ違う、ごめん! ぼうっとして話聞けてなかった」
「あははっ、正直〜」
「うぅ……。それで、オッケーとは」
「今日、久々に本部に来てほしいなって」
「ああ……本部……かあ」
桜家の血を引く者としては断るべき。
だけど、もはや今さらな感じも否めない。
それに、これまでは家庭事情を理由に距離を取ろうとしていたけれど、
最近はルリちゃんや遥世くんと過ごす時間を純粋に楽しんでいる自分がいる。
今は、どうせ観月くんもいないし……。
ちょっとくらいいいかな、なんて。
「じゃあ……お邪魔しようかな」
「やったーっ楽しみ! 約束だからね! あ、遥世くんも誘っちゃおうよ〜! ……と思ったけど、今は話しかけないほうがいいんだっけ?」
教室をぐるりと見回したルリちゃん。
どうやら、遥世くんを探しているみたい。
「遥世くんなら左から2番目の5列目にいるよ」
「……。……えっ、あれっ!?」