悪女は果てない愛に抱かれる
ため息とともにスマホの画面を見せられた。
「“ごめん補習引っかかった! あゆ先輩とふたりで先に本部行っててー!”……だってさ」
「なるほど……。じゃあ、ふたりで行こっか?」
遥世くんの顔を覗き込むと、黒縁メガネ越しに目があった。
相変わらず涼しげで綺麗な目元だなあ……。
しばらく見惚れていると、慌てたように片手で隠されてしまった。
「……今井サン、あんまり見つめらると困るんですけどね」
「っえ! あ、ごめん! 綺麗な目だなと思って……」
「はあ。すぐそういうこと言う」
「ごっ、ごめん……嫌だったかな」
「僕だけにならいいよ」
「え?」
聞こえなかった。
首を傾げてみる。
「……なんでもない。それより早く行こ」
そう言って手をとられた。
異性にそうされることが初めなせいで、一瞬どきっとしてしまう。
だけど、遥世くんはただわたしを教室の外に誘導しただけで、その手はすぐに離れていった。