悪女は果てない愛に抱かれる
「石?」
と、遥世くんが首を傾げたときだった。
「──あぁん……!」
と、いつもの部屋の扉の奥から、女の人の悩ましい声が聴こえてきたのは。
しばし、その場に硬直する。
鼓動が急激に加速した。
いや……落ち着いて。
聞き間違いかもしれないし。
何か別の音が、偶然そのように聞こえたのかもしれないし……っ。
と言い聞かせた矢先に、また声が響いた。
「ああっ……、もうだめぇ、楓さま、すき……すきぃ……っ!」
あからさまなソレに、血液が脳天までぐわぐわと上昇していく。
こういうときこそ冷静にって言うけど、無理じゃない……!?
こんな場面に出くわしたら、さすがの遥世くんだって……。
おそるおそる隣を見上げる……も。
──────無。
……えっ!?
改めて見ても……無、だ。
すごい、どうしてこんなに落ち着いていられるの。
わたしなんか……もう、倒れそう、だよ。