悪女は果てない愛に抱かれる
「楓くんのやつ……また連れ込みやがって」
「ま、また……?」
「はー……。やり部屋にすんなってあれほど言ったのに」
「………」
「………あ、ごめん。サイアクな言葉使った」
「い、いえっ……おかまいなく……」
再度ため息を落とした遥世くんに手を引かれる。
「とりあえず隣の部屋に避難しよ」
「あ……ぅ、はい」
カチンコチンに固まったままぎこちなく足を踏み出した。
隣の部屋は空きテナントのようにがらんとしていて、手前にひとつ大きなソファがぽつんとあるだけだった。
ふたりで腰を下ろして、しばらくの間沈黙を保つ。
だけど静かなせいで、まだ薄っすらとあちららの声が聞こえてきてしまう。
気まずさに押し潰されそうになっていたところに、「んん゛っ」と遥世くんの咳払い。
「もうちょっと待ってたら終わると思うから」
「あっ、……うん」
「……いや、やっぱ終わらせてくる」
「えっ!」