悪女は果てない愛に抱かれる
遥世くんがすくっと立ち上がるので、まさか乗り込む気じゃ……と焦ったけれど。
隣の部屋に面した壁に歩っていったかと思えば、ドン、と一蹴り。
うわあ〜、容赦ない!
すると、女の人の声はぴたりと止んだ。
ふう……と、遥世くんと同じタイミングで安堵の吐息が漏れる。
「まじでごめん。せっかく来てもらったのに、中であんなことになってて」
「いやいや、とんでもないです。べつに遥世くんは悪くないし……。なんか、冷静に対処しててすごいね……?」
焦るとヘンに饒舌になる癖、早く直したい。
今、絶対余計なこと言った。
「まあ慣れてるんで」
「……なるほど」
「一応言っとくけど僕がって意味じゃないからな、楓くんのハナシだから」
「う、うん、わかってるよ!」
「基本関係者以外立ち禁なのに、観月がいないとすーぐ女連れ混むんだよ楓くん」
「それは……由々しき問題だね……」
「だろ?」
「………」
「………」